「着飾る恋には理由があって」
これまでの火曜10時ドラマの方向性をガラリと変えるような、日常の中で描かれる恋愛模様が人気を呼んでいる、来週とうとう最終回を迎えるドラマ。主人公に川口春奈、相手役に横浜流星というキャストを迎え、若者のラブストーリーが描かれていた。
の、だが。
皆さんは、「当て馬」という言葉をご存知だろうか。少女漫画や恋愛ドラマにて頻繁に使用される言葉。意中の相手と最終的に結ばれない人を指す。
その役に、このドラマでは「向井理」が選ばれた。
当て馬とは普通、中盤辺りで本命とヒロインのイチャイチャシーンを目の当たりにし、本命に「俺…諦めねえから」と宣戦布告などをし、仲違いした2人の背中をなんやかんやで押す。「お前が好きなのは、俺じゃねえだろ」とか言って。そのはずなのだ。中盤で、ああ当て馬なんだなと再確認させられるはずなのだ。
向井理、終盤で本気出す。
失踪状態を貫き、回想での出演が大半を占めていた向井理だったが、中盤になってやっと姿を表すのが、向井理だ。他の当て馬達がヒロインをちょっと靡かせつつも負けをチラ見しだす中盤に、やっとこさ姿を表すのだ。
前回8話、星野源を背負って大勝利と話題をかっさらった向井理。
本気で「マジで??マジで????」と興奮しまくりで声に出した例のシーン。今でもトラックから向井理の長い足が登場したシーンを思い出しては幸せな気持ちになれるのだが、今週の9話でも新たな事件が起こった。
まず9話は、真柴が壁にぶつかる描写が多く描かれた。その壁にメンタルを追いやられ、北海道に行く事になるかもしれないと告げる駿に対し、「じゃあ私も一緒に行こうかな。仕事は北海道で探すよ」と、今の仕事を辞めようかと思うほどに。
そんな真柴に、「逃げてない?今の状況から逃げたら駄目だ」と言葉をかける駿にその場を去ってしまうのだが…。
駿の思いも痛いほど分かる。
自分の経験と重なり、逃げ出した際の後悔を誰よりも知っている駿が「逃げ出したらダメだ」と言うのは必然だし、真柴にとって必要な言葉でもあっただろう。
それでも、逃げ出したい程辛い状況下で「逃げるな」と言われるのは、やはり堪えるもの。あの時の真柴ちゃんが"欲しかったセリフ"とは、食い違ってしまった。
自宅に戻った真柴。家には誰も居なくて、それが追い打ちになるように心がやられてく。そんな中目に付いたのは、社長がくれたマメシバのキーホルダーだった。
迷いなく、助けを求めるように社長にLINEを送る。すぐ帰ってくる返信。
『真柴?どうした?』
真柴の異変に気付いて直ぐに返信をしてくれた社長は、その時の真柴にとってどれほどの救いだったのだろう。
「もう限界かもしれないです」と泣く真柴。SNSに対する恐怖、店舗先での状況、そして駿の言葉。色々な事が重なってボロボロだった。逃げたいと思うほどに。
そんな真柴ちゃんに、どう対応するのだろう。抱きしめてしまうのか、と思わず手に汗を握った。だが、違ったのだ。
泣いてる真柴ちゃんを見せないように、背中で隠すシャチ。
天才だ………
思わず声が漏れた。そして優しく「大丈夫か?」と聞く社長に真柴は、「大丈夫です」と、涙が止まらない様子で答える。大丈夫じゃない。真柴のメンタルはもうズタボロだ。
そんな中、「大丈夫じゃないだろ」と優しい声が。
「真柴は、笑っててくれないと困る」
向井理ー!!!!!!!!!!!!!
なんなんだよ…訳わかんねえよ…好きだよ…
ここで抱きしめるんですよ彼は……。
泣いてる真柴ちゃんを見て、駿の事が過ぎる。彼に頼れない理由があるのだろう。そう思ってか、ただ傍にいた社長が、泣いてる真柴ちゃんを優しく抱きしめる。
ただ笑っていて欲しいと、願って。
そんな思いを言葉にしながら、優しく頭を撫で、肩をポンと叩きながら、泣いてる真柴を抱きしめるのだ。完璧か…?????そうして星野源を背負って、いや抱いて、"おいげん"を最高の形でかっさらって、9話は幕を閉じた。
最終回前話、当て馬がこんなにも光のある勝ちに近い事が未だかつてあっただろうか。いやもう、向井理が当て馬なのかすら分からないレベルのキャラに彼はなっている。
まだ興奮が冷めやらない。だがもう私は、こんなに楽しめるドラマに出会えた事に感謝する他なるまい。
最終回、星野源が乗る背中の主を楽しみに見ていよう。