アサガオのブログ

ドラマの備忘録✍🏻

旅行のしない修学旅行

はてなインターネット文学賞「記憶に残っている、あの日」

 

私は、修学旅行に行かなかった。

一生に一度といえる、学校生活最大のイベント。なぜ行かなかったのか。それは、私は所謂別室登校というやつだったからだ。ただ周りと少し違うのは、同じ別室登校の仲間が2人居たという事。教室に通えないくらい辛かったけど、その2人と別室にて話しながらワイワイと勉強するのが楽しくて学校へは足を運べていた。

そんな中、最終学年だった私たちには修学旅行の季節がやってきた。当たり前のように行かない選択を持っていたし、そんな私達を先生も理解していた。

先生は「自宅学習ね」と言ったが、せっかくの修学旅行。家で各々勉強するはずがないし、3人で集まろうか、と話がまとまった。一応勉強ワークやノートを持ち寄って、「一瞬でも勉強したら自宅学習になるから」なんて悪巧みじみたことを考えながら。3人とその母親とも相談して1人の仲間の家に行ける事になり、朝8時だったか9時だったか…もう忘れたけれど、そんな早い時間に集まる事になった。着ていく服を選んで、準備を済ませて、目を閉じた。

そして次の日、とうとう修学旅行当日がやってきた。教室の皆が大阪に旅立っている頃、私達3人も集合時間を迎えた。ちなみに、朝早くにしたから私は10分程度遅刻したのだけど、そこは気にしないでいよう。

そして3人自転車で集まり、1人の友達の元へ向かう。本来の修学旅行の移動のように長くもないし、見慣れない景色に心躍らせる事も無い。それでも、3人でペダルを漕ぎながら進む見慣れた景色には、妙にワクワクとした気持ちになった。

とても仲の良い私達だったが、集まる1人の仲間の家に来るのは初めてだった。少し特別感を感じながら、友達の家に足を踏み入れる。

友達の両親は仕事や用事で留守にするらしく、心置き無く3人で楽しめる状況となった。写真にハマっていたのもあり、まずはお家記念(?)に3人で写真を撮った。

それから勉強道具を開いて、少しだけ勉強を始めた。思い返せば、真面目だ。だけどそれもほんの一瞬で、話しながらする勉強は全く進まなかった。そして私達は、一瞬でキリをつけてから勉強道具を片付け始めた。一瞬はしたから、自宅学習は完了だ。3人で持ち寄ったお菓子をテーブルいっぱいに広げた。友達の家へ言った際のお楽しみの一つだ。絶えない会話と美味しいお菓子、加工アプリで写真を撮りながら、笑っていた。本来の修学旅行のように観光地を巡るわけでも、テーマパークではしゃぐ訳でもない。それでも私達は私達の修学旅行を楽しんだ。

お菓子を少し残したまま、次は人生ゲームを始めた。以外に初めての人生ゲームだった。修学旅行で恋バナを楽しむように、たわいも無い話で爆笑して、変な話でツボって……。ケタケタと笑いながら、時に脱線しながらする長い長い人生ゲームはとても楽しかった。

そして、脱線しながらした人生ゲームは短いようで長く…他にも色々と遊んだ後、3人だけの修学旅行は終わりを迎えた。毎日のように顔を合わせているし、毎日LINEでやり取りをしていた。そう考えると、ただの3人で遊んだ日のひとつなのかもしれない。それでもこの日だけは、特別で、楽しい日だったと、今でも記憶に残っている。

 

2人のお陰で教室に復帰出来たし、2人がいなければ修学旅行の日も、ただ辛く部屋にこもっていたのかな、なんて思う。

夢はないけれど、今3人で集まることは無い。あんなに仲が良かったのに、私は今2人のLINEすらも持っていない状況だ。それでも、あの日の楽しい日常は何にも変え難いほどに楽しかったのを鮮明に覚えている。いつかまた会えればいいな、なんて事を、2人にも送った手作りの卒業アルバムを見てたまに思う。

 

ただ遊んだだけのように見える、3人だけの思い出だけど。あの日の小さな修学旅行は、今でも大切な記憶だ。